沖縄の企業法務の部屋

カテゴリ: 労務管理


残業「大半の社員が過少申告」 電通を書類送検へ  日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07H3E_X01C16A1CC0000/

 これを読んで「電通よ、おまえもか。」と本気で思っている弁護士はいないと思います。
 というのも、法律事務所でも、結構な割合で、長時間労働が常態化しているからです。
 弁護士個人の事件で忙しいとか、そういうのは個人の問題ですが、事務所の事件でサービス残業となっているなら、立派な労働基準法違反です。特に都心部の法律事務所は、事務所によっては超長時間労働であると聞きます。
 長時間労働の問題は、今に始まったことではないわけです。大昔から長時間労働の問題が解決したことはないのです。
 その一番の問題は、日本の法律が、本気で長時間労働を取り締まる仕組みになっていない点にあります。例えば、法律上、企業(正確には使用者)には労働者の労働時間を把握する義務がある、と解釈されていますが、これも法律にはっきりとは書いておらず、それ自体には罰則もないのです。労働時間を把握しなくても罰則がないなら、企業は必死で労働者の労働時間を把握することもないです。労働時間を把握していなければ、サービス残業かどうかの証拠も残らないのです。労働者が積極的に証拠を残すことをしなければ。
 そしてまた、違法な長時間労働をさせても、その刑罰は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」にしかなりません。私が知る限り、懲役刑が科されたという話は聞いたことがないので(私が知らないだけかもしれませんが。)、ほとんど刑罰が科されることはないのです(もちろん、書類送検されるだけでも、企業には負担になりますが。)。
 弁護士としては、「従業員の労働時間を把握しましょう。残業するときは36協定を締結しましょう。残業代は払いましょう。最初から残業が想定されるときは、固定残業代方式を検討しましょう。ただし、固定残業代方式を導入する際は、就業規則や雇用契約書や給与明細書の整備が必要です。最低賃金を割らないようにする必要もあります。」というアドバイスになりますが、実際には抜け穴だらけではあります。ただし、労働者が証拠を残したうえで争ってくると、企業が負けることになってしまいます。


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労働基準監督官、増員へ…電通の過労自殺受け  読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20161105-OYT1T50066.html

 かつては「残業を許容すべきだ」という経済界の声に押され、ホワイトカラーエグゼンプションを導入しようという流れにあったのですが、今度は一転して「36協定さえあれば残業が事実上無制限にできるのはおかしい」という声まで出るようになりました。その流れで労働基準監督官の増員です。背景には、残業や低賃金が少子化の一因になっている、という考えもあるようです。

 弁護士として言っておきたいのは、労働基準監督署対策だけでは全く不十分である、ということです。例えば残業代にしても、労働基準監督署がスルーする事項でも、裁判所はもっと踏み込んで判断してきます。例えば、メールのやりとりをもとに残業を認定することも裁判所ではできます。ここは、税務署対策さえしておけばいい税金の問題とは違うところです。
 もし、顧問社労士さんが労働基準監督署対策しかしていないようであれば、裁判になったら違う判断になる場合もある、ということを覚悟しておく必要があります。後で裁判になって「労働基準監督署には何も言われなかったのに、裁判所の言っていることはおかしい。」と弁護士に言われても、弁護士としては困ってしまいます。労働基準監督署の言うことよりも裁判所の言うことの方が上なのです。


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